バイオガスは、生ごみなどの有機物を酸素のない状態で微生物に分解させたときに出るガスだ。主成分はメタン(おおむね50〜70%)と二酸化炭素で、ほかに硫化水素などをわずかに含む。メタンは都市ガスの主成分と同じなので、燃やして発電したり、ボイラーで熱にしたり、精製して都市ガスや車両の燃料に使ったりできる。
原料の植物や動物は、もともと大気中の二酸化炭素を取り込んで育ったものなので、燃やしても大気中の二酸化炭素は実質的に増えないとみなされる(カーボンニュートラル)。さらに、ふん尿や生ごみを放置したり埋め立てたりすると出てしまうメタン(二酸化炭素より温室効果が強い)を回収して使うため、温室効果ガスの削減効果が大きい再生可能エネルギーとして位置づけられている。
原料になるもの
- 食品廃棄物:食品工場の残さ、スーパーや飲食店の売れ残り・調理くず、家庭の生ごみ
- 家畜ふん尿:乳牛・肉牛・豚などのふん尿(北海道など酪農地帯で多い)
- 下水汚泥:下水処理場で出る汚泥。処理場の中で「消化槽」により発酵させるのが一般的
- そのほか:焼酎かす、農作物の残さ、浄化槽汚泥など
原料によってガスの出やすさは大きく違う。一般に、油分やでんぷんを多く含む食品残さはガスが多く出て、水分の多いふん尿や汚泥は量あたりのガスが少ない。複数の原料を混ぜて発酵させる「混合発酵」で、ガスの量と発酵の安定を両立させる例も多い。
プラントの流れ
バイオガスプラントは、大きく分けて次の設備でできている。
- 受入・前処理:原料を受け入れ、破砕し、プラスチックや金属などの異物を取り除く。包装されたままの食品廃棄物を扱う施設では、この工程の性能が全体の安定運転を左右する
- 発酵槽(消化槽):微生物が有機物を分解してメタンをつくるタンク。水分の多い原料を扱う「湿式」と、固形物の多い原料を扱う「乾式」がある。温度は約35〜38℃の「中温発酵」と約53〜55℃の「高温発酵」が一般的
- ガスホルダー:発生量の変動をならすためにガスをためる設備
- 精製(脱硫など):機器を傷める硫化水素を取り除く。都市ガスの導管に入れる場合は、二酸化炭素も除いてメタン濃度を高める(バイオメタン)
- 発電機・ボイラー:ガスエンジン発電機で電気をつくり、エンジンの排熱で発酵槽を温める。電気と熱を同時に使う仕組みはコージェネレーション(CHP)と呼ばれる
- 消化液の処理:発酵を終えた液体(消化液)は、肥料として畑にまくか、水処理をして放流する
メタン発酵の中身
発酵槽の中では、性質の違う微生物が順番に働いている。まず大きな有機物(でんぷん、たんぱく質、脂肪)が小さな分子に分解され(加水分解)、次に有機酸がつくられ(酸生成)、最後にメタン生成菌が酢酸や水素からメタンをつくる。メタン生成菌は温度やpHの変化、アンモニアの増えすぎに弱く、原料を急に増やしすぎると有機酸がたまって発酵が止まることがある。安定運転には、投入量・温度・pH・ガス組成を毎日確かめる運転管理が欠かせない。
どこで使われているか
日本では、下水処理場の消化ガス発電、食品リサイクル施設、北海道などの酪農地帯の家畜ふん尿のプラントが代表的だ。2012年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)では、メタン発酵ガスによる発電が独立した区分として設けられ、導入が進んだ。欧州、特にドイツやデンマーク、イタリアなどでは数千か所規模でプラントが動いており、近年は発電よりも、精製して都市ガス網に入れるバイオメタンへの転換が進んでいる。
BLUE NOVAの見方
バイオガスは「発電所」というより、廃棄物を受け入れて処理し、その副産物としてエネルギーと肥料を生む「処理施設」と考えると実態をつかみやすい。原料をどこから、どれだけ、いくらで受け入れられるかと、消化液をどう使うかが、技術の選択以上に事業の成否を分ける。採算の考え方は特集「バイオガス事業の採算」で整理した。