都市ガスの主成分であるメタンを、化石燃料の天然ガスからではなく、別の方法でつくって置き換えようとする動きが広がっている。代表的なのが、生ごみなどからつくる「バイオメタン」と、水素と二酸化炭素から合成する「e-メタン(合成メタン)」だ。どちらもメタンなので、既存の都市ガスの導管や、家庭・工場のガス機器をそのまま使えるのが最大の利点だ。
バイオメタン
バイオガスから二酸化炭素や硫化水素などを取り除き、メタン濃度を天然ガスと同じ水準まで高めたもの。原料は食品廃棄物、家畜ふん尿、下水汚泥、農業残さなどで、米国では「RNG(再生可能天然ガス)」とも呼ばれる。欧州は2022年に打ち出した計画「REPowerEU」で、2030年に年350億立方メートルのバイオメタン生産を目標に掲げ、発電よりも導管注入や車両燃料への利用を急いでいる。
e-メタン(合成メタン)
再生可能エネルギーなどでつくった水素と、工場の排ガスや大気から回収した二酸化炭素を反応させてつくるメタン。この反応をメタネーションと呼ぶ。代表的な方式は、触媒を使って二酸化炭素1分子と水素4分子からメタン1分子と水2分子をつくる「サバティエ反応」だ。燃やすと二酸化炭素が出るが、原料として回収した二酸化炭素と相殺されるため、全体として排出を増やさないという考え方になる。
日本は、2030年に既存の都市ガスインフラへ合成メタンを1%注入し、2050年には90%にする目標を掲げている。ガス会社各社は、水素の調達や大型の製造設備、海外で製造したe-メタンを液化して運ぶサプライチェーンの実証を進めている。
違いを整理すると
- 原料:バイオメタンは有機性の廃棄物など、e-メタンは水素と二酸化炭素
- つくり方:バイオメタンは発酵と精製、e-メタンは化学合成(メタネーション)
- コストの主な要因:バイオメタンは原料の収集と精製設備、e-メタンは水素の価格(電力の価格)
- 量の制約:バイオメタンは原料の量で上限が決まりやすく、e-メタンは安い再エネ電力と水素をどれだけ確保できるかで決まる
課題
e-メタンは、水素をつくる段階とメタンに変える段階でエネルギーを失うため、同じ再エネ電力を直接使うより効率が下がる。二酸化炭素を排出した側と、e-メタンを燃やした側のどちらの削減として数えるかという「排出量の帰属」のルールも、国際的に議論が続いている。バイオメタンは、原料の奪い合いや、メタンの漏えいをどう防ぐかが課題だ。どちらも、環境価値を証書でどう取引するかの制度づくりが普及の鍵を握る。
BLUE NOVAの見方
短期的に量を確保しやすいのは、すでに技術が確立したバイオメタンだ。e-メタンは、安い水素の調達と排出量の数え方のルールが固まるかどうかで、2030年以降の伸び方が大きく変わる。ニュースでは、製造量(Nm³/h や t/年)、水素とCO2の調達先、価格の見通しに注目したい。
参考: 資源エネルギー庁(都市ガスのカーボンニュートラル)、日本ガス協会、European Biogas Association